空の産業革命!ドローンが生み出す新たなビジネスの可能性(4)

本稿ではドローンの産業利用のうち、まず農業について考察していく。

ドローンによる農業の費用削減と効率化

農業の現場でのドローン利用は、農薬散布を思い浮かべる人も多いだろう。広大な田畑の上空を農薬散布のヘリコプターが飛んでいる姿は、テレビの映像などでも一度は目にしたことがあると思う。
だがこのヘリコプターによる農薬散布は、安全面やコストの問題などから、長いあいだ問題を抱えてきた。ヘリコプターからでは風圧が強いため、至近距離で農薬を散布することができず、どうしても薬効が弱くなっていた。また、ヘリコプターを利用する際には散布を農協に委託することから、コストが高くかかってしまうことが農家の悩みであった。何より安全面では、人体への影響が心配される農薬が予期せぬ広範囲に飛散する心配があり、近隣の住民から反対を受けることも多かった。そして、農薬散布に使用する小型ヘリコプターの導入には1000万円程のコストが掛かることから、次第に使用される機会も少なくなっていった。

そこに登場したのがドローンである。農業用のドローンはホビー用の形状とは異なり、今までの有人ヘリコプターをそのまま小型にしたような機体もある。ドローンといっても一度に20リットル近くの農薬を積んで飛行するものである。高性能・最新機種で一例を挙げると、2017年3月にDJIから発売された農薬散布用ドローン「AGRAS MG-1」は、飛行形態で1,471mm×1,471mm×482mmという大きさであり、本体の重さ9.5kg、農薬を入れる液体タンクの容量は10リットル(10kg)という仕様である。価格帯も180万円から200万円という製品であるが、前述した有人小型ヘリコプターと比較すると、価格や維持費などは格段に安価である。また新車のトラクターが数百万円することを考えると、農業機械としては妥当な価格帯の必要経費ともいえる。有人ヘリコプターに比べると、かなり低い位置から農薬散布ができることから、予定範囲外への飛散量を抑えることで農薬の代金と健康被害も抑えることができる。

ドローンによる農業のIT化

農業におけるドローンの活躍の場は、農薬散布だけではない。農業の市場にドローンが参入したことで、付随して農業のIT化が促進される事象が起きているのである。

まずドローンによる空撮により、農作物を上空から映像でチェックすることで、その生育状態を確認することができる。そしてドローンに高感度カメラ、マルチスペクトルカメラ、サーマルカメラなどを搭載していれば、その日毎の農作物の活性度や肉眼で判別のつかなかった状況を画像データで確認することができ、いま現在の農作物の状態を確認・管理することが可能になる。
これらの撮影データを管理して解析を行う企業もあり、管理体制を強化することで収穫量や収穫物の質を上げることができる。これらは従来の農業の手法とは一線を画しているものであり、ドローンによる農業のIT化の促進を明示するものである。また、ここにAI(人工知能)を導入することで、その最適化をリアルタイムに行うことができる。具体的には、ドローンのデータからAIが農作物の育成状況を判断し、連動して最適な農薬散布や肥料の調合、日照時間までをコントロールしていくということである。まだ途上段階ではあるが、ドローンによる環境のモニタリングや各種センサーから取得するデータ、さらには気象衛星データに至るまでの大量のデータを組み合わせ、AIに判断させて農作物の育成をコントロールする実験が各国で進められている。

そしてドローンによる農業のIT化は、同時に「技術的課題」を抱えることにもなる。ドローンの宿命であるバッテリーの持続時間、飛行が操縦者の技能に左右されること、GPS飛行時の飛行精度、荷重時の飛行安定性などがその問題点として挙げられる。また農業でドローンを利用する際のセンサー稼働において、正確に農作物のデータを解析するための「ノイズ(電波干渉やセンサーの誤作動などによる非適応データ)」の除外、取得したデータを農作物の育成に役立てるための判断のノウハウが必要になる。
だが、農業という分野が抱えている大きな命題「少子高齢化による後継者問題」を考えた際、「先人の技と知見をデジタル化して共有する」ことは緊急課題であり、農業の現場においてドローンをはじめとしたITの活用は、すでに議論の段階になく実現化が始まっている。
そして農業だけではなく、衰退産業といわれる一次・二次産業においても、ドローンやIT化の切り口から、関連市場の発展と雇用創出への起爆剤として期待されているのである。

(本稿、次回で完結)
(依藤 慎司)

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