前回、「お一人様ビジネス」の先にあるもの (1)で「お一人様ビジネス」を「お一人様でも便利」というサービス、もうひとつは「一人では寂しいアナタのココロのスキマをお埋めします」というサービスに区分した。それを踏まえて「お一人様ビジネス」の先にあるものは何であるのか、最後に提言を行うことが本稿の主旨である。前稿を前提に読み進めていただきたい。
過度な「お一人様ビジネス」は「個」の幼児化を増長
前稿から更に話が拡散するが、人はそもそも個では生きていけないように作られている。それは精神的にも肉体的・生物学的にでもある。何かに頼り、頼られ、支えあわなければ生命として存続できないのだ。
社会共同体から個の生活へ、望むと望まざるとにかかわらず住環境の変化した個人は、義務より権利を重んじるようになった。それでいて同時に、それまで存在していた社会参加意欲・社会的承認の欠落に気づき、それを求めるようになった。「自分らしさ」も社会的承認がなければ存在しえない相対的な命題であり、個のままでは自分探しすら徒労に終わることになる。
飛んでいた話がようやく戻る。結局、いわゆる「お一人様ビジネス」のある一面は、個で生きていくことが難しい時代に、旧来の社会共同体のシステムを欲した個人に「一時の共生」を提供しているに過ぎないのだ。市民的成熟の機会が失われた幼児のような個に対して、対価と引き換えにサービスを提供しているだけなのである。
肝心なのは、サービスを提供している「だけ」という点にある。提供者は、対価を受け取ったあとの「個」がどうであろうと、何も関係がなく、サービス終了後に責任を持つこともない。前稿のお菓子の例でいうと、「食べたいから欲しがるぶん提供しているだけであって、過剰摂取のことは知ったことではない」のである。
あえて反発を受けるような書き方をしたが、アドラー心理学でいう「頭が痛いから会社に行きたくないのではなく、会社に行きたくないから頭が痛くなる」のアレを考えてもらいたい。痛みが実在していることは理解のうえである。意図するところは、「仮病と決めつけているのではなく、逆転の発想をすることで、無意識に避けていた真の命題にアプローチでき、ほんとうの問題は何かを解決することができる」なのである。
幼児化した個人が普通に生活できることは、誤解を恐れずにいえば、異常なことである。ここでいう異常とは「通常あるべき姿とは異なる」の意である。人間が二人以上いれば、それだけで世の中すべては自分の思い通りにはならない。それが当たり前である。個人が「個」で生きられる社会は、他者との共生能力が欠けた、幼児のまま生きられる社会ということである。個人が全員そのような幼児なら、当然ながら世の中はとっくに崩壊している。それを補っている保育士のような存在・機能が社会保障である。
個人の「社会共同体参加」ではなく、個人の「個」が増殖するようになればどうなるか。結局は社会全体が衰退し、「個」が尊重される余裕はなくなっていくのだ。その社会システムがうまく機能していた時代が、高度経済成長期以前なのである。その当時には当然ながら「お一人様ビジネス」というココロのスキマ的なサービスは現在のようには存在していなかったし、存在する必要もなかったのだ。
「家族」という単位は、無償の愛を通じて社会共同体システムを「個」に提供してくれた最小単位である。それがなくなり、作ろうとしなくなった「個」は、それでいて本能的に家族という最小単位を求めるがゆえに「お一人様ビジネス」のサービスを享受する。それはときに、乾いた「個」に麻薬的に染みわたり満足と歓喜を与えてくれるが、この効果は短時間で必ず切れる。そして消費社会は、この絶望的な歓喜を歓迎しているのである。
「お一人様ビジネス」がひとを幸せにするために
話が平行するが、いわゆる結婚適齢期を過ぎた「お一人様」も、論じるまでもなく増加している。
収入に不安があり結婚に踏み切れない男性や、自立しており婚期を逃した女性。そして共通して、ひとりで気ままにいることに慣れ、交際さえも面倒だと思うようになってしまった男女。旧来では、寂しいということで現状を抜け出して早く結婚したい、と願うのが自然なことであった。それが「お一人様」をターゲットとしたビジネスが浸透したことにより、結婚願望が薄れてきているのである。
あらゆる消費活動において、一人でいることが快適になり、代替サービスの普及によって結婚しなくとも不便さを感じなくなってきている。だが結婚する人が少なくなると、当然少子化問題も深刻化する。経済を支える人口そのものが減少するのだから当然である。消費も減り、税収も減る。まずブライダル業界から産業の衰退がはじまる。
男女が結婚し、新居を構え、子どもが生まれ、成長し、やがて天寿を全うする。その過程で、あらゆる消費行動が起き、経済はまわっていくのである。
支出の少ない、快適な「お一人様」を増やすことは、経済全体にとってはマイナスでしかないのだ。消費社会において利益を求める企業も、この視点を決して忘れてほしくない。「お一人様ビジネス」のある一面は、短期的に見れば「個」の利益を生むが、長期的にみれば「個」を含んだ全体の利益を損ねるのである。
これまで散々「お一人様ビジネス」をあおってきていて恐縮なのだが、お一人様ビジネスは「お一人様を生産」するのではなく、「意に反してお一人様である個人の、お一人様脱出サービス」にシフトチェンジしてもらいたい。消極的な「お一人様」には淋しさと不便さを感じて生活をしてもらうほうが、結婚と家庭の構築につながり、経済のためには大きなプラスとなる。(左記、場合によっては反発を受けるかもしれないが、どうか大局視点で見てほしい)
もちろんそのためには、短期的利益追求を超越した団体と施策・国策が必要になる。
Xビジネス開発室は、「個」の刹那的な利益やサービス提供者の短期的な利益ではなく、遠回りに見えても「社会共同体は個の集合でできている」の観点から、競争原理の作用する「脱お一人様となるお一人様ビジネス」の構築を提言したい。それがほんとうの「個」の幸せであると信じる。Xビジネスの使命のひとつと考えているので、実行の意志ある個人・団体はぜひXビジネスに集っていただきたい。
(依藤 慎司)
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