前稿はXビジネスらしく、健康増進であろうもののなかから特に直球でアレげなモノを採り上げた。今回はさらに調子に乗ってエスカレートして、さらに直球な、すっぽんエキスとバイアグラについて考察していく。
この記事の目次
1.みんな飲んでる? 栄養ドリンク、実はその成分は…?(前稿) 2.みんな打ってる? ニンニク注射、実はその成分は…?(前稿) 3.みんな頼ってる? すっぽんエキス、実はその成分は…? 4.みんなキメてる? バイアグラ、実はその成分は…?
3.みんな頼ってる? すっぽんエキス、実はその成分は…?
すっぽん自体の滋養強壮効果ぶりは改めて説明するまでもないが、その滋養成分は、アミノ酸、コラーゲン等が主である。すっぽん鍋は料亭、すっぽんエキスは精力増進と、なにやらオジサンのイメージがつきまとう。だが前述の滋養成分、特にコラーゲンによるアンチエイジング効果によって、女性にも一定の人気がある。
改めてすっぽんとは、カメ科に属する生物で主に東南アジア(日本含む)に分布している生き物である。カメ科であるのだが、甲羅は角質化していないため柔らかく、この柔らかい甲羅の周辺に良質なコラーゲンをたっぷり含んでいることから「姿煮」のように甲羅つきで鍋の中に鎮座しているのである。
すっぽんは古くからスタミナ食として食べられており、その生き血をワインや日本酒で割ったお酒も有名である。その主な効能をみてみると、
・滋養強壮、疲労回復
・基礎代謝向上
・精力増強
・ダイエット効果
・貧血予防、造血
・美肌効果
・骨や歯を丈夫にする作用
と、いいことづくめである。その理由はすっぽんがその体に秘めた各種の栄養成分によるもので、バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、フェニルアラニン、メチオニン、リジン、トリプトファン、ヒスチジンといった必須アミノ酸がこれでもかと含まれている。さらに、アルギニン、アスパラギン酸やグルタミン酸といった非必須アミノ酸、とどめにビタミンA、ビタミンB群、ビタミンEといったビタミン類にカルシウムや鉄分、亜鉛といった必須ミネラルなどまで含んでいる。そして女性に嬉しいコラーゲンも豊富に含まれているという、まさに歩く滋養のカタマリなのである。
いいことづくめのスッポンの滋養成分なのであるが、実は「国立健康・栄養研究所」のWebサイトの情報によると、「カルシウムやタンパク質、とくに必須アミノ酸やビタミンが豊富。動物でありながらその脂肪は植物性油脂と同じ不飽和脂肪酸でリノール酸を多く含んでいる。俗に「体力衰退」、「肺結核」、「滋養強壮」などに用いられている。しかし、その作用機序や主な成分の詳細は不明であり、ヒトでの有効性・安全性に関する情報は見当たらない。」となっている。
実は、国内で販売されているすっぽんのなかには、国産でなく大陸方面からの輸入ものが原料となっているものが多くある。それらは国産のすっぽんに比べると育っている環境の違いやエサなどから栄養価が比べものにならないくらい低いと言われており、すっぽん本来の効能を得られにくいと言われているのだ。事実、様々なメーカーで生産されているすっぽんエキスも、すっぽん単体の成分に加えて、高麗人参や赤まむし、果てはローズヒップなどのハーブまで配合されているものもある。それらがまやかしとまでは言わないが、肝心のすっぽん本体の栄養素を考えて、国産のすっぽんを原料としたすっぽんエキスを選ぶよう注意したいところである。また、すっぽんサプリの中でもエキスや粉末など製造する会社によって違いがあり、エキスを薄めてカプセル化しているものや、すっぽんの不要な部分を粉末にしてサプリメントにしているような製品には要注意である。
すっぽんの主な栄養素
この滋養強壮の代名詞とも言えるような、すっぽんエキスの市場はどうなっているのだろうか。市場概況を矢野経済研究所「食品産業白書 2016年版」から引用すると、2015年度のすっぽんエキスの市場規模は、前年比103.0%の82億4,000万円円となっており、市場は拡大に転じている。その前年まで市場の牽引役であった通信販売での失速が影響したものの、再び持ち直している。
【すっぽんエキス市場規推移】
出所:矢野経済研究所推計
すっぽんエキスは中高年男性が主な顧客層となっているが、近年では若年層や女性ユーザーの獲得にも力を入れており、専門店のほかコンビニなどでの拡販も進めている。すっぽんエキスを使用した健康食品はコラーゲンやアミノ酸を多く含むことから、美容やアンチエイジング志向の高まりにより、女性向けの需要が拡大した。また前述したが、すっぽん以外の他の成分と複合した商品の展開がみられるなど、市場は今後も堅調な伸びが予測される。
4.みんなキメてる? バイアグラ、実はその成分は…?
バイアグラ。ある意味(ケンコバ的な意味で)、健康注入の最高峰である。じつはこの名称は、宅急便(ヤマト運輸の登録商標)と宅配便(一般名称)の関係と同じように、一般的な薬品名ではなく、先発メーカーであるファイザーの商品名なのである。
バイアグラは、一般的な薬品名としては「シルデナフィル」という。勃起不全 (いわゆるED) 、および肺動脈性肺高血圧症の治療薬である。バイアグラが商品名(商標)として有名になっているが、ファイザーの日本での特許切れによって、各社から同様の効能の後発薬品が存在している。
シルデナフィルは、もともとは狭心症の治療薬である。狭心症とは、心臓の筋肉(心筋)に酸素を供給している冠動脈が動脈硬化や攣縮を起こすことで、「一過性の心筋の虚血のため」胸痛・胸部圧迫感などが起こるものである。そして心筋への血液供給、つまり血流の増大を意図して研究・開発が始まったものであったが、陰茎の勃起を促進する作用が認められたことから、この適応薬として発売されることとなった経緯がある。つまりは血流促進の薬であったのだ。
話はいったん飛ぶのだが、男性が性的な刺激を受けると、男性器でcGMP(環状グアノシン一リン酸)という成分が作られる。このcGMPには血管を拡張させる作用があり、これによって男性器に血液が流れ込み、勃起が起こる。しかし、長時間の勃起状態は危険(鬱血状態)であるため、どこかで勃起を収める必要がある。そのために、血管拡張作用のあるcGMPを抑制する作用があるPDE5という酵素が体内から放出されている。そして、シルデナフィルにはこのPDE5の働きを抑制する作用があり、これによって勃起状態が維持されるのである。
それでは、この「バイアグラ」業界であるところのED治療薬の市場はどうなっているのだろうか。市場概況を矢野経済研究所「アダルト向け市場徹底研究 2016」から引用すると、2014年度の市場規模(薬価ベース)は前年比3.2%減の1,500億円と推定された。バイアグラ以降のジェネリック医薬品メーカーの参入で薬価が下落したことにより、ユーザーにとっては利用しやすく処方量も増加したのだが、金額規模では逆に市場が縮小する結果となっている。
だが結婚年齢の晩婚化もあり需要は根強く、今後の市場規模は大きな変化なく維持されていくものとみられる。2015年では横ばい1,500億円の市場規模を予測している。
【ED治療薬市場 市場規模推移】
出所:矢野経済研究所推計
ED治療薬は、後発のジェネリック薬品が2014年に解禁となったことで、バイエル薬品の「レビトラ」、日本イーライリリーの「シアリス」をはじめとする製品が市場に登場している。シェアでいうと「バイアグラ」「レビトラ」「シアリス」の三種で、ほぼ市場を独占している状態である。購入には医師の処方箋が必要であるが、ネット通販での個人輸入形式で購入する方法もあり、購入と服用の敷居はかなり低くなっている。その結果、市場の数値として出てこないユーザー層が一定数存在するものと思われる。
ただし、前述したように、長時間の勃起状態の継続は血管の拡張と鬱血状態を強いることになり、体に大きな負担が掛かるものである。裏を返せばそれだけ体内での分解や吸収が早く、有効成分の効果も強いということだ。シルデナフィルの副作用として目の充血や顔のほてりがよく知られており、服用した人の9割近くが体験しているとのこと。また、心臓病・脳血管障害・高血圧で治療中であったり、最近まで治療経験があった場合は特に注意が必要である。心臓病の薬の中には、バイアグラとの併用が禁忌とされている薬もある。ほとんどの人に副作用が出るほど、効果の強い薬であるということを認識しておかなければならないのである。
シルデナフィルは特にアルコールの摂取時にその作用が強くなることが知られている。実際、バイアグラが「夢の薬」「画期的新薬」として市場に出回り始める前の1997年、芸能人の江頭2:50が「事件」を起こしている。とある店で飲んでいたエガちゃんが密かに入手したバイアグラ。酔った勢いで「バイアグラを5錠一気飲みしてやる!!!」と酒と一緒に一度に飲み干し、間もなく卒倒。搬送先の病院で点滴を受けることになったが、その後復活して入院することなく帰宅したとのこと。そして真偽の程は定かではないが、エガちゃんのこの事件のせいで、厚生省(当時)によるバイアグラの認可が遅れた、という逸話が残っている。
この事件によって、バイアグラは一気にその知名度を加速したのであった。(たぶん)
(依藤 慎司)
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